美術鑑賞を嗜む生き方 阿加井秀樹

はじめまして、阿加井秀樹と申します。趣味は美術鑑賞です。いただいた美術品が私にとって声も出ないほどの感動を与えました。その感動を皆さんにも伝えたいそんな気持ちでこのブログを書き記してまいります。

エカチェリーナ・ヴァシリエヴナ・スカヴロンスキー伯爵夫人の肖像

 

みなさんこんにちは。阿加井秀樹です。

 

今回もルーブル美術館展の作品について紹介していきます。

 

今回ご紹介する作品はエカチェリーナ・ヴァシリエヴナ・スカヴロンスキー伯爵夫人の肖像という作品です。この作品はエリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランによって制作された作品です。ルブランがロシア滞在中に描いた作品でもあります。

 

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スカヴロンスカヤ伯爵夫人はグリゴリー・ポチョムキンの姪で愛人であり、エカチェリーナ2世のお気に入りの女官でした。

 

彼女の姉妹と並んで、エカチェリーナ2世治世下のロシアの宮廷で特権的立場にありました。スカヴロンスカヤ伯爵夫人は教育を受けておらず、会す内容も空疎で、一日中無為に過ごしていたそうです。ですが、かわいらしい顔と天使のような愛らしさが彼女の比類のない魅力となっていました。

 

この時、夫人は35歳の未亡人で、非常に裕福だったそうです。

服とクッションに使われた明るい青色と赤色が彼女の肌を官能的に見せると同時に、やわらかな雰囲気を生み出しています。

 

夫人と彼女の5人の姉妹たちは、初めのうちは教育を受けておらず無知でしたが、宮廷に出入りするようになると洗練されていき、ロシアの宮廷で最もひいきされる存在となり、ほとんど王族と同じような扱いを受けました。

 

ポチョムキンとは生涯、断続的に愛人関係にあったとされます。1781年にスカヴロンスキー伯爵と結婚するが、伯爵は10年後に死去。のちにイタリア人の提督と再婚したそうです。

 

ではまた。

阿加井秀樹

 

ヴェロネーゼ最高傑作「美しきナーニ」

 

みなさんこんにちは。阿加井秀樹です。

 

今回もルーブル美術展の作品から取り上げてご紹介していきます。

ヴェロネーゼの美しきナーニという作品です。今回の美術館展の目玉ともいえる作品の一つです。

 

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この作品は過去のルーブル展でも来たことはあるみたいですが、今回の来日で27年ぶりなのだそうです。

 

この作品の特徴としてはなんといってもまるで写真かのような繊細な描写と4Kかのような色彩の豊かさが特徴的だと思います。

 

この作品はヴェロネーゼが数多く残してきた肖像画の中でも最高傑作だともいわれています。この黒い背景とは対照的なブルーのドレスが女性の艶やかさを醸し出しています。

 

若干ぽっちゃり気味に見えますが、当時は太っている方がきれいで美しいとされていたのでこの作品をみた当時の人々はあまりに美人で卒倒したとかしないとか。

 

あとこの作品はしばしば神秘的な作品と表現されることがあります。その理由は彼女の表情にあります。この絵はどこから見ても目が合わないのだそうです。

 

落ち着いた感じに喜んでいるようにも見えるし、どこか恥ずかしがっているようにも見えます、はたまた寂しがっているのではないかという人もいます。

 

まさしく神秘的などこかモナ・リザのような謎があります。しかし、この作品のモデルが誰かはわかっていません。

 

 

「ヴィーナスとキューピッド」について

 

みなさんこんにちは。阿加井秀樹です。

 

前回のルーブル美術館の作品紹介に引き続き、今回もルーブル美術展の作品について学びを深めてもらえたらと思います。

 

今回ご紹介する作品はレンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レインが1657年に完成させた「ヴィーナスとキューピッド」という作品についてみてみましょう。

 

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ヴィーナスのモデルとされているのは内縁の妻で後半生のレンブラントを支えた ヘンドリッキェだと言われています。

 

そして、キューピッドにすべく無理に羽根をつけられた娘のコルネリアともども戸惑いを隠せないばかりか、母と子で何かに怯えているように感じられないでもないですね。

 

しかし、不安の消えない日々の生活に疲れた女性が、彼女を100%信頼しきって甘える子どもを抱き寄せている姿には、生身の人間としての真実味があり、それは、その親密な母と子をこちらから見ている老画家の思いそのものでもあるかのようですね。

 

レンブラントを代表する傑作と比べれば陰影が細やかではなく、光の当たり方も空間の奥行きも平板な感じなので、工房作とみられていたのも無理はないように思えますが、さまざまな思いを胸に秘めたこの女性の表情は、巨匠本人でなければ描けないレベルのものだと思います。

 

生きることに一生懸命な母と娘、それを心から愛おしく思っている男、これを肖像画とは言い難く彼の姿もそこにはないけれど、家族というものを深く考えさせる作品だと思います。

 

カメラを手に取る父親の姿まで感じることができます。

 

 

ロマン主義・アントワーヌ=ジャン・グロについて

 

みなさんこんにちは。阿加井秀樹です。

 

来年の1月19日まで大阪市立美術館ルーブル美術館展が行われています。

今回はその美術館展にある作品について紹介していきたいと思います。

 

今回のルーブル展の表紙になっている作品はアントワーヌ=ジャン・グロ「アルコレ橋のボナパルトという作品です。

 

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この作品のモデルとなっている人物はナポレオン・ボナパルトです。

 

まずはじめにアントワーヌ=ジャン・グロについてお話していきます。

 

ジャン・グロはフランスの初期のロマン主義の画家です。ロマン主義は17世紀後半から18世紀初頭の芸術活動の事をさしています。

 

簡単に説明すると、情熱や反発心などの個人の感情を重視した表現です。ジャン・グロは実際に1796年にナポレオンとその奥さんに出会い、イタリア遠征総司令官のナポレオンの肖像画を描くことになります。

 

ナポレオンがイタリア遠征を成功させると“英雄の肖像画を描いた人”としてアクティブに活動します。ナポレオン失墜後も国王の正式な肖像画家に就任します。

 

「アルコレ橋のボナパルト」の見どころとして、アルコレ橋のボナパルトは軍旗をもって仲間を勇気づけ突撃をする直前を描いています。見どころは何といっても顔。

 

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この時ナポレオンは27歳です。今から敵軍に突撃する様子が描かれています。なんと凛々しく、勇気に満ち溢れた顔でしょう。素早いタッチゆえ躍動感も感じられます。

 

それではまた。

阿加井秀樹

 

美しくロマンチックな作品を生み出したアーサー・ヒューズ

 

みなさんこんにちは。阿加井秀樹です。

 

今回はアーサー・ヒューズについてお話していきたいと思います。

アーサー・ヒューズは、 ラファエル前派のメンバーではないものの、ラファエル前派風の作品を数多く残した画家です。特にロマンチックな雰囲気が魅力です。

 

1832年にイギリスに生まれたヒューズは、15歳でロイヤル・アカデミー・スクールに入学。17歳でロイヤル・アカデミー展に初出品しました。

 

その翌年、 ラファエル前派の画家たちが発刊した芸術雑誌に強い感銘を受け、ロセッティやミレイなどラファエル前派の画家たちと親交を深めていきます。1852年には、ロイヤル・アカデミー展にラファエル前派風の作品「オフィーリア」を出品。偶然にもミレイも「オフィーリア」を出品していて、2つの作品は並んで展示されました。

 

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その後も、ラファエル前派風の鮮やかな色彩と精密な描写の作品を次々と発表。

特に、愛や美の儚さと直面した恋人たちを好んで描き、「四月の恋」「長すぎた婚約」は代表作となりました。

 

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「四月の恋」

 

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「長すぎた婚約」

 

作品が好評だったにも関わらず、ヒューズはロイヤル・アカデミーの会員にも準会員にも選出されることはありませんでした。それはヒューズが物静かで穏やかな性格で、派手な成功や華やかな生活よりも、家庭という穏やかな幸せを大切にしたからだといわれています。

 

そんな人柄だからこそ、美しくロマンチックな雰囲気の作品を生み出すことができたのかもしれません。1915年に亡くなるまで絵画制作を続け、生涯に750枚もの挿絵、700枚以上の素描や絵画を描きました。

 

ではまた。

阿加井秀樹

 

ラファエロの有名作品「アテナイの学堂」

みなさんこんにちは。阿加井秀樹です。

 

今回はあの有名な画家についてお話していきたいと思います。

それはラファエロという画家です。そんなラファエロの壁画の中でも、最も有名なのがアテナイの学堂」。バチカン教皇庁にあります。

 

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アテナイとは古代ギリシャの都市。その都市の学堂で賢人たちが議論を交わしたり研究したりする姿が見事な調和をもって描かれています。大多数の人数を一つの画面に無理なく収め、生き生きと描き出したラファエロの手法も見どころですが、注目すべきは画面中央にいる人物。

 

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赤い服(プラトン)と青い服(ソクラテス)の男性が何かを語り合いながら歩いている姿が描かれていますが、その赤い服の男性はかのレオナルド・ダ・ヴィンチをモデルに描かれています。そしてさらに画面手前で座って本を読む男性はヘラクレイトスに扮したミケランジェロ

 

ラファエロはこの二人の子供か孫のような年齢だったため、ライバルと言うよりは先輩として多大なる敬意を払っていました。その敬意を込めて、古代ギリシャの賢人たちの姿を、偉大な先輩たちをモデルに描いたのです。

 

ちなみに、画面右にごく控えめに先輩たちから何かを学ぼうとする青年がいます。

その姿はラファエロ自身。放蕩が過ぎて若死にしてしまったラファエロですが、芸術家として先輩たちを敬う気持ちは人一倍だったのです。

 

ではまた。

阿加井秀樹

 

 

ゴッホの「ひまわり」について

みなさんこんにちは。阿加井秀樹です。

 

これまでいろいろな作品を取り上げてきましたが、ゴッホの作品についてあまり触れていなかったので、今回はゴッホの作品に触れていこうと思います。

 

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言わずと知れたゴッホ「ひまわり」は、1888年の作品です。ゴッホにとって向日葵という花は、南仏の良き思い出を象徴するものだったとされています。ゴッホは激情家としても知られており、精神を病んで精神病院にも入院していました。入院してからは、実は向日葵の絵を描かなくなったそうです。

 

しかしあの花びらも散り、ほとんど枯れかけた向日葵の絵を見て、あれが良き思い出の象徴だと感じる人は少ないのではないでしょうか。

 

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少なくとも私、阿加井秀樹には、むしろ暖かく穏やかな日々の中で、崩壊寸前のギリギリの精神状態を表しているように見えます。

南仏の幸福な日々を風景によってよりも儚い花を描くことで、その中で最後まで自分を保とうと苦しんだゴッホの心を表しているように感じます。それゆえに、この花がいつまでも私の中で枯れずに、力強く焼付きます。

 

それでもゴッホのひまわりから灼熱の太陽を感じ取ることが出来るのは、ひとつは既存の油絵のルールを無視した技法にあります。

 

ゴッホは油絵の絵の具が乾ききる前に、絶妙なタイミングで色を重ねています。そのため微妙に色が混ざり合い、視点の定まらない、蜃気楼のような熱を描くことが出来ています。

 

さらに、ゴッホはこの絵一枚を描くのに白い絵の具を何本も使ったそうです。向日葵を育て、そして枯らしていく強い夏の日差しを、白を多用することにより表現しているのかもしれません。

 

「ひまわり」はゴッホの、あるいは人間の狂気にも見える純粋な情熱を見事に表した不朽の名作だと思います。

 

ではまた。阿加井秀樹