アルフレッド・シスレー作品「ポール=マルリーの洪水」
みなさんこんにちは。阿加井秀樹です。
今回はアルフレッド・シスレーのポール=マルリーの洪水という作品についてお話していきます。1876年のポール=マルリーを襲ったセーヌ川の氾濫をテーマとしたシスレーの代表作です。シスレーは、この年の洪水を描いた6点の絵画を残していいます。
どんよりとした雲空の下、あたり一面を水が覆っている描写は画面全体が彩度の低い暗色系の色彩で包まれ、それは、災害用のボートに乗る人々の窮状と同調しています。
一方、建物の矩形と水平線が基調となった安定した構図が採用されており、洪水という惨劇を過度にドラマ化することを避け、冷静な目で描いています。
普段見慣れた街の変貌した様子に寄せたシスレーの関心が前面に現われているかのようです。そんな日常にもある不安的要因として、予期しない出来事や外的要素によって、平穏な日常が破壊的に侵食され、変容してしまう姿を描いた本作であるものの、波立つ水面の筆触を感じさせる描写や、厚い雲間から射し込む陽光によって微妙に変化する色彩の自然的な表現は、観る者に強い印象を与えるだけでなく、王制の影響や痕跡が強く残るポール=マルリーの街の歴史を刻む記録画的な作品としての側面もあります。
ではまた。
阿加井秀樹