「世界中の子と友達になれる」
みなさんこんにちは。阿加井秀樹です。
今回ご紹介する作品は松井冬子の世界中の子と友達になれるです。
松井冬子の名を世に知らしめる第一歩となったのが、世界中の子と友達になれるです。
よく目を凝らさないとわからないのですが、藤棚の枝に垂れ下がるおびただしい数のスズメバチが描かれていたり、打ち捨てられたような空のゆりかごがあったり、スズメバチの間を縫うように中腰で歩みを進める少女の手足は血まみれなどなど、不穏な予感に満ちたモチーフの連続で、奇妙な明るさのある画面からは調和の取れた狂気が感じられます。
松井冬子は古典的な絹本着色という、絹地に岩絵具で細密な線を描いていく画法で、耽美的かつ狂気を感じさせる幻想の世界を描いています。どこか禍々しく、おどろおどろしくさえある松井冬子の世界観は、妖しさのただよう女性などのモチーフと、現実と幻想の世界をあいまいにする朧げな色使いに象徴されます。
完成後1年間は、なかなか次作に取り掛かることができなかったと作者本人が語る残るほど、熱のこもった力作ですので、是非一度ご覧ください。
それではまた。
阿加井秀樹