みなさんこんにちは。阿加井秀樹です。
前回のルーブル美術館の作品紹介に引き続き、今回もルーブル美術展の作品について学びを深めてもらえたらと思います。
今回ご紹介する作品はレンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レインが1657年に完成させた「ヴィーナスとキューピッド」という作品についてみてみましょう。
ヴィーナスのモデルとされているのは内縁の妻で後半生のレンブラントを支えた ヘンドリッキェだと言われています。
そして、キューピッドにすべく無理に羽根をつけられた娘のコルネリアともども戸惑いを隠せないばかりか、母と子で何かに怯えているように感じられないでもないですね。
しかし、不安の消えない日々の生活に疲れた女性が、彼女を100%信頼しきって甘える子どもを抱き寄せている姿には、生身の人間としての真実味があり、それは、その親密な母と子をこちらから見ている老画家の思いそのものでもあるかのようですね。
レンブラントを代表する傑作と比べれば陰影が細やかではなく、光の当たり方も空間の奥行きも平板な感じなので、工房作とみられていたのも無理はないように思えますが、さまざまな思いを胸に秘めたこの女性の表情は、巨匠本人でなければ描けないレベルのものだと思います。
生きることに一生懸命な母と娘、それを心から愛おしく思っている男、これを肖像画とは言い難く彼の姿もそこにはないけれど、家族というものを深く考えさせる作品だと思います。
カメラを手に取る父親の姿まで感じることができます。