みなさんこんにちは。阿加井秀樹です。
今回は書籍をご紹介させていただきます。
『そのとき、西洋では 時代で比べる日本美術と西洋美術』宮下規久朗氏の作品です。
同時代の西洋美術の動きと日本の動きを照らし合わせている内容となっています。
日本美術は日本の中だけで醸成されてきたのではありません。
例えば、近年人気の伊藤若冲や曾我蕭白らの作品には、明の奇想派や長崎の清人の影響が指摘されていると言います。
その「独自性と呼べる要素は、美術史研究の進展とともにどんどん縮小して」おり、「東アジア文化圏を中心とする世界の中で位置づけて眺める必要があろう」と著者は述べます。
そのような世界的な運動体として美術を見るとき、遠い西洋世界と日本の美術の動きが一致していることがあると言います。
新しい宗教が興った鎌倉時代、運慶らの写実的な彫刻が作られましたが、そのとき、西洋でも新しい修道会が設立され、写実的な表現を求めていきます。
「いずれも新興の政治勢力と経済力、そして新たな宗教的情熱の生み出した現実的かつ復古的な美術であった」。
これらの「作品」には「芸術と信仰という重層的なまなざしが注がれ」ていたことに注目し、「美術」こそ新しい概念という発想に至ります。
非常に興味深い作品となっていますので、是非一度読んでみてはいかがでしょうか。
それではまた。
阿加井秀樹