「墨田河舟遊」
みなさんこんにちは。阿加井秀樹です。
本日ご紹介する作品は鏑木清方の墨田河舟遊という作品です。
清方は1878年、東京神田佐久間町に生まれ、父は条野採菊といい、ジャーナリストでありながら山々亭有人と号した幕末の人情本作家です。
13歳となる1891年7月に、浮世絵師の系譜を引く水野年方に入門し、翌年には家庭の事情により神田の東京英語学校をやめ、画業に専心しています。
また近代日本の美人画家として上村松園、彼の門下より出た伊東深水と並び称せられています。
本作品は6曲1双の大画面の中に、舟遊びを楽しむ人々を描いた大作です。
江戸時代、大名一行はたくさんの華やかな女性たちを舟に乗せ、人形の舞に興じて宴会を開いています。
一方、舟の屋上では船頭たちが一所懸命に舟を操る仕事姿や別の舟には火遊びに興じる若侍、また別の舟には漁をする人たちなど、奥行きのある絵画の中に江戸のさまざまな風俗を詰め込んでいます。
特に鏑木清方の作品は、ただの美人画や人物画ではなく、人の姿を通して社会や街、時代を映し出しています。
その時代背景や、その瞬間の各人物の物語が墨田河舟遊という絵を見ることで読み取ることが出来るのは鏑木清方の美人画を描く作家としての人物の特徴をくみ取る能力と人物画と描く作家としての動きや気持ちを表す能力に長けているからこそ描ける画風と言えます。
現在は東京国立近代美術館に貯蔵されておりますので是非一度足を運んで頂きたいです。
それではまた。
阿加井秀樹