「アビニヨンの娘たち」
こんにちわ阿加井秀樹です。
ピカソが代表作の一つである「アビニヨンの娘たち」をご存知でしょうか。
アビニヨンというのはスペインの地名であり、ここには5人の娼婦が描かれています。
その絵の描かれた様子が、とても’’リアル’’です。
ちなみに、「アビニヨンの娘たち」が描かれたその時代カメラがこの世に登場したことによって「目に映るとおりに描くをという従来のゴールが崩れ、「アートにしかできないことはなにか」という問いが浮かび上がってきた時代です。
ピカソは、それまで誰も疑わなかったことに疑問をもちはじめたのです。
以前であれば、そんな問いにわざわざ考えるまでもなかったでしょう。
なぜなら、ピカソよりもおよそ500年前のルネサンスの時代に、遠近法という明確な「答え」がありました。リアルを追求したければ、遠近法を使えばよかったのです。
しかしピカソは、「既存の答え」の延長線上では満足できませんでした。彼は、子どものような新鮮な目で世界を見つめ直し、「自分なりの答え」を探そうとしたのです。彼は「『1つの視点から人間の視覚だけを使って見た世界』こそがリアルだ」という遠近法の前提に疑問を持ちました。
実際、遠近法が描こうとする世界は、私たちがものを見るときのそれともかなり違っています。
私たちは1つの位置からある対象物を見ているときでも、これまでそれについて得てきた知識・経験を無意識に前提にしています。
加えて、そもそも視覚だけを使って見るということもあり得ません。そう、私たちは、さまざまな情報をいったん頭に取り込み、脳内で再構成して初めて“見る”ことができるのです。
「半分のリアル」しか描けない遠近法に疑問を持ったピカソは、私たちが3次元の世界をとらえている実際の状態により近い「新しいリアルさ」を模索しました。そうしてたどり着いたのが、「さまざまな視点から認識したものを1つの画面に再構成する」という彼なりの答えでした。
その結果生まれた表現が、「アビニヨンの娘たち」だったのです。
これから絵画に興味をもつ人は、一度「アビニヨンの娘たち」を見て感じて、絵画が単なる状況の描写ではないことを知ってみてください。
それではまた。阿加井秀樹