みなさんこんにちは。阿加井秀樹です。
今回ご紹介する作品は没後90年記念 岸田劉生展です。
この展覧会は日本の近代美術の歴史の中でもとりわけ独創的な絵画の道を歩んだ岸田劉生の没後90年を記念する回顧展です。
出品作は初期の水彩画、代表作道路と土手と塀(切通之写生)や愛娘麗子を描いた肖像画、「東洋の美」に目覚めて独学で取り組んだ日本画など、東京国立近代美術館をはじめ日本各地の美術館が所蔵する作品約150点で構成されています。
岸田は二十年余りの画業の中で何度も画風を大きく変化させているのですが、変化のきっかけには幾つもの出会いがあるように思います。
若干十四歳にして両親を失った岸田ですが、キリスト教の洗礼を受けたことで牧師の田村直臣と出会って画家になることを奨められ、さらに雑誌『白樺』を通じてゴッホ、ゴーギャン、マチスの芸術に衝撃を受けるとともに、親友となる武者小路実篤とも出会います。
肺病と診断されたために戸外での写生ができなくなったことはマイナスの出会いなのですが、室内で制作できる静物画に取り組んで新たな境地を切り拓く強靱さもあります。
最愛の娘・麗子の誕生は数々の麗子像として結実しました。
今回の展覧会を通して、岸田の人生と作品は根底において相互に不可分に結びついているように感じました。
それではまた。
阿加井秀樹