みなさんこんにちは。阿加井秀樹です。
今回はイタリア、ルネサンスの画家サンドロ・ボッティチェリの絵画であるトンドとよばれる円形の板にテンペラで描かれた作品の柘榴の聖母を紹介していきます。
なぜ、ざくろなのか気になった人は多くいるのではないでしょうか。ざくろは「キリストの復活」の象徴とされるそうです。
古代ギリシャ・ローマでは、プロセルピナ(春の女神)と結びつけられ世に春をもたらし、大地を復活させる女神である。これが「復活」と結びついたのでしょうか。
多くの種子を持ち、硬い皮に包まれていることから、権威の下での人々の結束の象徴でもあり、純潔の象徴ともされたそうです。ちなみにこの時代の神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世(1459-1519)は、柘榴を紋章としているというから驚きです。
「マクシミリアン1世」の肖像画
この作品の特徴はざくろもありますが、中央に位置する聖母マリアの虚ろな表情にあります。抱きかかえている幼子のイエスの将来茨の道であることを既に知っているかのような憂いに満ちたこの表情はボッティチェリだったからこそ表現できたのではないでしょうか。
板に描かれたこの作品の大きさはなんと直径で140㎝以上もあるそうです。非常に大きな作品であり、この作品をとても繊細に描いています。先日紹介した祭壇画のような崇高的価値が高い作品だと思います。
ではまた。
阿加井秀樹