尾形光琳作品、国宝「燕子花図屏風」
みなさんこんにちは。阿加井秀樹です。
今回ご紹介する作品は尾形光琳の燕子花図屏風です。この作品は尾形光琳が40代前半頃に手掛けたとされる国宝です。
燕子花図屏風は平安時代に成立した、最も著名な日本の歌物語のひとつ伊勢物語の第九段「八橋」の場面を描いた作品で、光琳は生涯中しばしば、この燕子花を意匠とした作品を手がけていることが知られていますが、燕子花図屏風はその中でも随一の代表的作品としても名高いです。
▼伊勢物語
伊勢物語では、三河国の八橋(現在の愛知県知立市八橋町近辺。水が蜘蛛の手のように分かれて流れているために、八つの橋を渡したことから八橋と名付けられたとされています)の沢のほとりに燕子花(カキツバタ)が美しく咲いていたと記されているが、燕子花図屏風ではその美しく咲く燕子花のみに主点を置いて「八橋」の場面が描写されています。
金地に栄える群青(燕子花の花部分)と緑青(燕子花の茎草部分)の軽妙明快で清々しい色彩、画面の中で心地よい旋律を奏でるかのような、律動的に配される燕子花の群生、そして、その燕子花の左隻と右隻での構図的対比の美しさは観る者の目を奪うばかりです。金地の余白の無限的空間の広がりや奥行き感は彼だからこそ成しえた美なのではないかと思います。
それではまた。
阿加井秀樹